2012/06/23

『声とギター』の録音おわる

録音がおわった。

この瞬間のために、約半年間、気持ちと時間を費やしてきた。
構想し、創作し、練り直し、練習し、それを幾度も幾度も、咀嚼し反芻する。
大げさに書くが、時に狂喜乱舞し、時に絶望した。
己の天才ぶりに舌を巻き、己の無能ぶりに反吐を吐いた。
時間は無限に足りず、無限など時間には存在しない。
要するに自分との勝負なのだった。

そんなふうにして、録音はなされる。
世の中の録音物はそうやってつくられている。
そうあるべきだと思う。
少なくとも僕の場合はそうだ。


そう、今日ばかりは特別だ。
今までの作品、毎回そうだったが、今回はさらに特別だ。

なぜなら、今回の作品は、声とギターだけで構成されているから。
ごまかしのきかない、僕の中で、もっともシンプルな音楽表現。

ギターのこまかなタッチ、声の息づかい、そういったものがすべてパッケージされる。
そうであれば、タイトルは、これしかない。




『声とギター』。



満を持して、『声とギター』、それを可能にしたのは、旅に出て数々の出会いを経たからでもあるが、なによりも、僕には田辺玄という盟友がいたからである。それははっきり書いておかなければならない。

彼の録音技術は、ギターのタッチや息づかいは言うに及ばず、声とギターの位相、なかんずく、現場での身体のグルーヴまで再現している。

今、ラフミックスを聴きながら、録音の素晴らしさに、猛烈に感動している。




そして、実は、本番はこれからなのだと気が付き、兜の尾を締め直すんである。

みなさまの元に届けるには、これからいくつもの過程を経なければならない。

たとえば、今回のジャケットはまた、特別なんである。
それはまた別のはなし。

まあ、今日だけは、録音がおわったことに、ただただ、酔おう。
こんな夜は今日しかないのだから。